vol.19  木の家はどこに行った?の巻
突然話題が変わりました。
前号のひとりごとまでは、ウッドデッキ作りに燃えるお父さんの悪戦苦闘振りを
書いてきましたが、ここで一服、というつもりで読んでいただきたい。

木は身近にある割に知られていない。
身近にある木の名前も分からない人が多いに違いない。

好きになってもらうためには、まず知ってもらうこと!
ということで、今回はちょっと木についての薀蓄をのたまってみることにする。

ウッドザビエル、かく語りき。
というわけである。

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マンション住まいは長生きできない!
なんて恐ろしいデータがある。

木の箱と、コンクリートの箱と鉄の箱に入れたマウスの様子や
生存率を調べるという静岡大学の実験である。
木質住宅のハウスメーカーのパンフレットにはかなりの確率で引用されている
実験なので知っている方も多いと思うが、その結果は
23日後のマウスの生存率は、木の箱が85%であるのに対し、
コンクリートの箱はなんと7%。
これは恐るべき数字である。
さらに、コンクリートの箱で育ったマウスは子育てもろくにしない!
この数字と現象をもって、マンションよりも「木の家」がいい、
という結論に持っていくのが通常だ。


確かに木の家がいいのは分かる。ただ、ここで考えてみたい。
木造住宅って、本当に「木の家」なの?
確かに柱や梁は木でできているかもしれないが、
実際に手に触れる部分はどうだろう?
実はかなり怪しい。


箱を構成するものはなにかというと、「床」「壁」「天井」である。
木造住宅の「床」「壁」「天井」は本当に「木」だろうか?
ちょいと廻りを見回して見て欲しい。
残念ながら多くの住宅が「木」ではない。
かろうじて床だけが「木」のようだが、それもカチカチにウレタンなどの樹脂で
コーティングされて、直接「木」に触れることはできない。
天井や壁は、いわゆるビニールクロス。
その下は石膏ボード。
和室の天井は流石に「木」だろうなんて思ったら大間違いだ。
ほぼ90%以上の確率で「紙」張りである。

ええー、そんなー、と思い、ドアを見てみると、これまた「シート貼」
そう考えると、実は木造住宅だからといって「木の箱」とは言いがたいことが分かる。


それでは、マンションは?
というと、やっぱり壁と天井はクロスで、床は「木」のケースが多い。
ということは、実際に人間が触れている部分というのは、
木造住宅もマンションも大差がないということだ。

大事なのは、「箱」ではなく、実際に「触れる」部分。
すなわち内装なのだと思う。


「劇的 ビフォア アフター」という番組がある。
作為的に「劇的」にしている感じが今ひとつ好きになれないのだが、
しばしば、杉の足場板を床材として利用するケースを見かける。
杉の足場板といえばわが社の「本業」であるが、
もちろん、足場板をそのまま使っているわけではない。

足場板に使用するような材料を乾燥させ、
「実加工」「表面仕上げ」を行ってから床として使用しているのだろう。
しかもいわゆる「塗装」をしていないようだ。
確かに足には優しいに違いない。
湿気も吸収してくれるし、目にも優しい。

そんなにいいものなら、
みんな「足場板フローリング」にすればいいわけだがそうはならない。

木には欠点があるからだ。

テレビに映るアフターの状態は確かにすばらしい。
が、決していつまでもそのままではない。

予想される問題点としては
・塗装をしていないので汚れが染み込みやすく、落ちにくい。結果汚くなる。
・反りが発生して床が平らでなくなる。
・板の合わせ目がすいてきて隙間にゴミが溜まりやすくなる
・表面が柔らかいので傷がつきやすい
などなど。

なんだー、そんなのいやだな。
と、ほとんどの人が思うはず。
確かに私もできれば避けたい。

実は上記の問題というのは昔の日本住宅にはほぼ例外なくあった問題なのである。
そして住む人の望む方向に家を作っていったら
今のようにシート張りの家になってしまったわけだ。

悲しいかな。

最近多い異常な事件の数々。
古きよき日本の美徳は、「木」がシートに変わるにしたがって
失われてたきたような気がしませんか?(ちょっと強引?)

スローライフとか、ロハスとか、
それでも時代は少しずつ変わり始めているような気もする。
利便性一辺倒の価値観から、不便であることをあえて受け入れることで、
「こころ」を取り戻そうとしているのではないかと思う。
その中で、ウッドデッキというのは
住宅の中で数少ない「木」との直接的な接点になっている。
マンションのバルコニーであればなおさらのことだ。
バルコニーのデッキスペースは、小さな子どもが座り込んで
遊ぶことのできるもっとも身近な屋外なのである。


変色しにくく、塗り替えの必要がない。
腐らない。
反り、割れ、ささくれがない。
天然木のような優しい手触り。

これはあるサッシメーカーの「木粉入り樹脂」デッキのセールスコピーである。

10年後には多くのデッキが樹脂のデッキになっていることだろう。
それもひとつの時代の流れだと思う。
が、しかし、それでもあえて

「やっぱり木がいい」

と思ってくれる人のために頑張りたいと思うのだが・・・。