vol.18 日曜大工に思う。 --- その5 ウッドデッキと環境問題 |
SPFを使ったウッドデッキで、7万円を浮かせ、自分の懐へ、 という野望が崩れたお父さん。 「構造計算偽造問題」がニュース番組を賑わせていることもあり、 目先の金のために品質を低下させなくてよかった! と心から思った次第だが、さて肝心の材料は決定していない。 ここまでの調査でわかったことをまとめると ・ ホームセンターで売っている「SPF」はデッキには向かない。 ・ デッキ材には「ハードウッド」と「ソフトウッド」がある。 ・ ジャラ・ウリンなどの「ハードウッド」系は、非常に硬く強いので 公共物件などに多く用いられるが、基本的には塗装せずに使用する。 塗装しても塗装が落ちやすい。 ・ レッドシダーなどの「ソフトウッド」は柔らかいので傷が付きやすく、 耐久性では「ハードウッド」に劣る。 ・ 「ハードウッド」のほうが価格が高い。 ・ 「ハードウッド」は木が硬い分非常に加工しにくいが、 「ソフトウッド」は加工しやすい。 ということで、某ネットショップの店長は 日本の住宅には「レッドシダー」が適している!という。 日本人が愛する素足の感触。 たしかに素足のままでデッキに出て、そこに寝転べれば気持ちいいだろう。 子ども達もきっと喜んで「ゴロゴロ」するに違いない。 この店長も人がよさそうだし、悪いものを勧めたりはしないだろう・・・・。 お父さんの心はぐっと安易な方向に傾きかけた。 いや、待てよ。自分のところで扱っている商品を勧めるのは当然だ。 人はよさそうに見えるのも、かえって胡散臭い。 ここで冷静にならなくては・・・。 お父さんは、危うく洗脳されかけたところをなんとか持ちこたえた。 あ、そういえば、店長の話には後半があったはずだ・・・。 お父さんはパソコンに向かった。 以下、店長からのメールの続きである。 /////////////////////////////////////////////////////////////////// さらに言えば・・・ レッドシダーなどの針葉樹系デッキの場合は、 環境にやさしいという特徴があります。 価格と品質のバランスは当然重要ですが、もうひとつ重要な基準が「環境」です。 ハイブリッドカー販売好調という昨今の情勢から考えても、 「環境」が商品選択の大きなポイントになっていることはあきらかです。 これが「大人の価値判断基準」ですね。 横浜市は13種類のゴミ分別を開始しました。 「横浜G30」というスローガンで、ゴミの30パーセント削減を 目標にしているらしい。 「面倒くさい」というのが取りあえずの本音であると思いますが、 それでも市民の方々が概ね協力的なのは、「正しい」主張に対し、「正しい」と 判断し、目先の損得を度外視することのできる「大人」だからなのだと思います。 横浜市民の皆さん、敬服いたします。 横浜から日本を変えてください。 結局、何にでも入り口と出口があります。 入り口を大きく開いて出口を絞れば「便秘」になるのは当然です。 ゴミ問題という出口を考えるためには、「消費」の構造を変えることが不可欠でしょう。 森林破壊という言葉があります。 破壊というのは「再生不能」な状態にしてしまうことです。 おもちゃの自動車に向かってハンマーを振り下せば「破壊」です。 タイヤが取れたくらいでは「破壊」とはいいません。 森林破壊というからには、森林に外力を加えたものがあり、それは通常人間です。 本来森林は再生可能なものであり、しっかり管理していれば「破壊」はされません。 伐採は「新陳代謝」であって、「壊死」とは違うのです。 伐採と植林がセットになって初めて新陳代謝といえます。 そう考えたとき、管理された森林から切り出される「木」と、 管理されていない森から切り出される木とでは、 明らかに環境への負荷が違うことが分かります。 日本の山にはたくさんの木が生えています。 そして、日本の森林面積の約40パーセントが植林された森です。 また、その多くが杉です。 植林地にある木のほとんどは戦後に植えられたものですので、 樹齢50年から60年といった、「切り頃」の木なのです。 が、残念なことに人気がない。 その最大の理由は住宅の構造変化にあります。 床・壁・天井といった面積の大きな部分はほとんど「新建材」になり、 無垢材をそのまま使用することはなくなりました。 新建材とは、合板技術などをもとに作られた建材で、接着剤を多用することが特徴。 シックハウス症候群の原因にもなりました。 現在、住宅に使われている材料で、目に見えるもののほとんどは 「新建材」であると思っていいでしょう。 床は合板の上に薄い木を貼ったもの。あるいは木目を印刷したもの。 壁はビニールクロス。その下地は石膏ボード。 ドアもまたシート貼り。いわゆる「印刷」。 洋間の天井は当然ビニールクロスだが、和室もやっぱり印刷です。 少しずつ木目をずらしたりして本物らしく装っていますが、 よく見ると本物でないことは一目瞭然。 これでは、「杉」の出る幕はありません。 かくして、日本の山林には「売れ残った」杉が放置され、 さらに「杉花粉」が嫌われ、花粉症の防止のための伐採が始まる始末です。 戦後の日本を支えることを夢見た「杉」は、いつの間にか売れ残りの邪魔者扱い。 「まったく、うるさくて仕方ないんだから・・」 なんて、小姑扱いされている現状です。 本来であれば、レッドシダーを輸入している場合ではありません。 日本の杉をもっとウッドデッキに使うべきです。 ではなぜ、レッドシダーなのかというと、「腐りにくい」からです。 日本の杉はどうかといえば、木の直径がレッドシダーと比べて小さいため、 どうしても腐りやすい「白太(しらた)」の部分の割合が増えてきます。 が、もともと杉の赤味(中心よりの赤い部分)は船材にも使われてきたように 決して腐りやすいものではありません。 この日本で育った杉をもっと有効に使うことができないだろうか。 そんなことを考えている今日この頃です。 余談ですが(これが本題なんですけど)、レッドシダーは、 カナダ政府の統制により、植林が行われ、蓄積量を減らさないように 伐採の管理がされています。 だから環境にやさしいのです。 また、比較的供給も品質も安定しており、それが、レッドシダーを使う理由です。 ジャラ・イペ・ウリンといったハードウッドは果たしてどうでしょう? 例えばウリンは非常に腐りにくく、港湾施設などの用途にも十分使えます。 なにしろアイアンウッドと呼ばれて、水に沈むくらい重く硬い。 しかし、それを日本の一般住宅に使う必要があるのでしょうか。 現在日本で販売されているハードウッド系デッキのほとんどは、 植林管理されていない素材です。 ということは、切ったら終わりで限りがあるということです。 限りがあるからには、もっと価値のある使い方ができると思うのですが、 経済の論理によって、日本に集まってきます。 ここ数年のハードウッド人気は異常なほどですが、その影響が原木の産地に どのような影響を与えているのかが気になるところです。 それでは、ご検討よろしくお願いいたします。 ---------------------------------------------------------------------- 意味が分からん。 自分勝手な店長だ。結局自分の言いたいことだけを言っただけではないか! 平和主義のお父さんも少々頭にきた。 思わず手に持った鉛筆を ボキッ! あーあ。 ため息をひとつ。 「おかあさん、鉛筆って燃えるゴミ?」 お父さんの手にある折れた鉛筆を見ながら、おかあさんは一言。 「なに言ってるの?削れば使えるでしょ!」 確かにそうだ。ボールペンでは捨てるしかないが、鉛筆だから削れる。 壊れたら捨てるのをごく当然だと思っていた自分を反省する。 この木だって、もっと使ってほしいに違いない。 少しだけやさしい気持ちになったお父さんだが、 店長への怒りは3日間納まらなかった・・・。 |