vol.17  日曜大工に思う。 --- その4 ウッドデッキの素材について考える
さて、前回は、後悔しないウッドデッキのレイアウトについて、
お父さんの悲哀を交えつつ考えてみましたが、そのお父さんもかなり本気です。


外に出たり、中に入ったり、地面に線を引っ張ったりして検討の結果、
お父さんの家でもデッキの大まかなデザインは決定しました。

目隠し効果・リビングの広がり効果・
バーベキューの際のお父さんの座る場所の検証もしっかり行い、
お父さん的にはかなり自信のプランです。

しかし、プランは決まっても予算が決まらないと奥様の決裁は受けられません。



まずは近くのホームセンターへ。


ホームセンターで見たのは「SPF-直輸入」なんて書かれたランバーの山。
「ウッドデッキにも最適」なんて書いてある。

2X4(90X40)の6フィート(1.8M)なら250円くらいで売っていたので、
仮に100本買っても25,000円。
6畳間程度のデッキならば、30,000円もあれば十分できる計算だ。
10万円は覚悟していたが安すぎる。

これなら、10万円かかったと虚偽の報告をすれば70,000円も儲かる・・・。
なんて、皮算用をしつつ帰宅。


そして、ネット検索してみることに。

ここで、ネット検索時の注意点を再確認。

●ネット上に書いてあることは、書いた人の個人的な意見であることが多く、
かなりの独断と偏見が入っている。
(この点、私についてもいえますが・・・)
決して中立ではありません。

確かに便利ですが、簡単に「そうなんだ」なんて信じてはいけません。
中立を装いつつ、実際にはかなりの偏見でできている
知能的なサイトもあるので要注意です。



とりあえず「ウッドデッキ」で検索。
(「WOODPRO」も結構上のほうに出てきます。)

検索して出てくるウッドデッキの素材の名前

ウエスタンレッドシダー(米杉)
イペ
アイアンウッド(ウリン)
サイプレス(オーストラリア桧)
セランガンバツ

このあたりはウッドデッキの素材として定評があるようだが、
お父さんの狙う肝心な「SPF」は出てこない。
よくよく見てみると腐り果てたウッドデッキの写真の横に
「SPF使用」と書いてあった。

なんじゃこりゃ。

「屋外には不適。きわめて腐りやすい」とある。
道理でちゃんとしたデッキ屋では扱っていないわけだ。
早くも70,000円横領の夢破れる!


素材の特徴についてはそれぞれいろいろ書いてあるが、
今ひとつ分かりにくい。

そこで、困ったお父さんは、非常に人がよさそうに見える、
あるショップの店長に問い合わせてみた。



以下、その店長からの回答である。

ウッドデッキの素材は大きく分けて
「ハードウッド」系と「ソフトウッド」系があります。
堅い木、柔らかい木、ということですが、一般に堅い木とは「広葉樹」、
柔らかい木とは「針葉樹」をさします。

広葉樹と針葉樹の話をし始めると長くなるので割愛しますが、
広葉樹の代表は「ケヤキ」「樫」「ブナ」など。
針葉樹の代表格は「杉」「ヒノキ」「松」です。
が、最近は、「木樹脂」などというものも登場してきています。

(と、穏やかな出だし・・・)

さて、ウッドデッキの材料でいいますと、ハードウッドの代表格は
「イペ」「ジャラ」「アイアンウッド」
さらに多少リーズナブルな「セランガンバツ」といったところ。

ソフトウッドの場合は、なんと言っても「ウエスタンレッドシダー(米杉)」。
「レッドウッド」「ヒノキ」などもあります。

耐久性ということで考えますと、腐りにくさ、表面の堅さ、強度の
どれをとっても「ハードウッド」が優れています。
公共物件、港湾施設など不特定多数の人が利用する場所には
通常このタイプが使用されます。
各ウッドデッキメーカーの宣伝も行き渡ってきて、価格的には高いものの
一般の住宅でも普通に使われるようになってきました。


が、そこで考えたい。
果たしてハードウッドのデッキは日本人の生活スタイルにあっているのか?
(店長、いよいよ本領を発揮してきたようです。前半で中立を装いつつ、
このあたりで洗脳に入る計画でしょうか・・・。お父さん危うし)


まず、ハードウッドのデッキは通常塗装せずに使用します。
公共施設などのデッキを見てみるとほとんど塗装していないことが分かります。
土足でバリバリ歩くので塗装してもすぐに落ちてしまいますし、
塗装すること自体がナンセンスです。

また、木が堅く高密度なので塗料が染み込まない、
というのも無塗装で使用される大きな理由です。


では、塗装していない木はどうなるのか?


ほぼ例外なく、グレーに変色してしまいます。
これは紫外線の影響で表面の細胞が破壊・劣化することにより起こります。
ただし、この劣化は、表面から最大でも3ミリ程度までですので、
大きな強度低下にはなりません。

木材がグレーに変色すること自体はきわめて自然なことで、
実際、レッドシダーの産地であるカナダでは、
ウッドデッキの多くを塗装しない状態で使用しています。

それが「味」だといえば、間違いなく「味」です。



それでは塗装の効果は?といいますと女性の化粧と同じで
「美観向上」「日焼け防止」「老化防止」です。

「素顔の君が好きだよ」
なんて歯の浮くような台詞を吐くかと思えば、
「やっぱり化粧すると女は変わるねー」なんて平気で言う。
何事にも裏と表があるのでその見極めが大事だ。
(店長、やや脱線気味)

顔にできた皴(しわ)には味がある。
でも皺にはなりたくない。
味のある顔よりも、皺のない顔。
それが世の中の女性の願いのはずだ。

だからこそ「コラーゲン」の話ではあんなに盛り上がるのに、
「足場板」の話では今ひとつ盛り上がらない。



というわけで(何が?)、女性が化粧するように木材も塗装すれば
表面の美観をより長く保持できるわけです。
日焼けのために表面が劣化してくると、
グレーに変色するとともに平滑性が失われ、トゲが刺さりやすくなってきます。

ただ、土足で使用する分にはそれほど問題になりません。
大切なのは、使い方です。

ここで問題になるのは日本人の文化と嗜好。
日本人はすぐ靴を脱ぎたがるという習性を持っています。


助手席の上司がおもむろに靴を脱ぎ、
シフトレバーの横にくさい足を乗せてきた、という苦い経験はありませんか?


ウッドデッキができると、その高さは室内の床面にある程度あわせます。
そのレベルはすなわち、「素足生活圏」のレベルなんです。
アメリカやカナダのウッドデッキと日本のウッドデッキの決定的な違いは
「素足生活圏」なのか、「土足生活圏」なのかということです。

当然欧米のデッキは土足です。
子どもがその上に寝転がったり、座り込んだりということは
あまり考えていません。


ハードウッドは確かに耐久性に優れ、デッキの素材としてはすばらしいものです。
しかし、素足を基本とする日本住宅と連続するウッドデッキとしては、
肌触りがソフトでササクレやトゲが出にくいソフトウッド系デッキのほうが
向いているのではないかと私は思います。


さらに言えば・・・・・


ここからさらに店長の説明はヒートアップしていく気配。
デッキのプランを練り、ホームセンターを視察し、ネットでの調査活動。
お父さんにとって長い1日であったが、その最後が店長の返事だったこともあり、
相当疲れたらしい。

流石のお父さんもこのあたりでうとうとし始めたので、今日はここでおしまい。

お疲れ様でした。


この続きは次回ということで。